大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和35(オ)672 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告代理人上原隼三の上告理由第一点、第二点、第四点および第五点について。

原判決の事実認定によれば、「被控訴人らの先代Dは訴外株式会社E材木店の代

表取締役で、同会社はDの個人商店と差異のない状況であつたので、Dの親友であ

つた控訴人は昭和二六年一〇月頃会社所有の広島県a町所在の山林の経営を委託さ

れたところ、同人はF商店G出張所の名義でこれが伐採、搬出、売却をしたが全然

売上代金を会社に納入しないので、会社は同年一二月中訴外Hを現地に派遣して調

査させた結果、控訴人とHとで棚卸表(甲第二号証の一、二)を作成し、これにも

とづいて、控訴人は同月二六日、九三〇、八七〇円をDに支払うこととして借用証

(甲第一号証)を差し入れ、会社の他の取締役もこの処置を承認してD個人の会社

に対する債権と差引勘定して決済したことを認めることができ」るというのである。

右事実認定は、挙示の証拠に照らし是認できるところであり、その間所論のような

理由不備、理由そごの違法は認められない。そして、かかる事実関係の下において

は、右判文中の「D個人の会社に対する債権と差引勘定して決済したことを認める

ことができる」との判示は、Dの会社に対する金銭債権と、会社の上告人(控訴人)

に対する金銭債権とを、対等額において差引計算した旨を判示している趣旨と解す

るのが相当である。しからば、Dのした行為は、上告人(控訴人)の会社に対する

債務の代位弁済にほかならず、いわゆる債務の履行に関する行為というべきである

から、それは何ら会社に不利益を与えるものとは認められず、商法二六五条の適用

はないものといわなければならない。これと結論を同じくする原判決は結局正当で

ある。なお、所論は、Dの会社に対するいかなる債権をもつて差引計算したかの事

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実を認定していないことの違法をいうが、原判決の確定した事実関係に照らし、原

判決は、Dが会社に対して、すくなくとも甲第一号記載の金額以上の金銭債権を有

していたことを認定している趣旨と解し得ないわけではなく、右認定は、挙示の証

拠に照らし是認し得ないわけではない。また、記録上、上告人においてDの会社に

対する金銭債権の存在につき争つたと認むべき証跡はなく、右債権の発生原因、金

額等を確定していないからといつて、所論の違法は認められない。されば所論は採

るを得ない。

同第三点について。

論旨は原審の適法にした証拠の取捨判断、事実の認定を非難するに帰し、適法な

上告理由とは認められない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと

おり判決する。

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 入 江 俊 郎

裁判官 斎 藤 朔 郎

裁判官 長 部 謹 吾

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